スーツケースが視覚障害者をナビ

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清水建設、日本IBM、三菱自動車、アルプスアルパイン、オムロンの5社は、2020年11月12日「一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム」を設立して、AIを活用した視覚障害者の自立移動を支援する「AIスーツケース」の社会実装を目指した実証試験を三井不動産の商業施設「コレド室町3」で開始しました。

AIスーツケースは、視覚障がいのある人が自立して街を移動することを支援するために、体に装着するウェラブルデバイスとスーツケース型ナビゲーションロボットで構成されています。ウェラブルデバイスは、顔画像認識用カメラや触角インターフェース、音声ガイダンス用スピーカーなどで構成されていて、スーツケース型ナビゲーションロボットの方は位置情報システムと周辺を認識するための距離センサー、加速度センサー、AI用PC、電源などで構成されています。

AIスーツケースを紹介するニュース (出典:ANNnewsCH

AIスーツケースは、位置情報と地図情報から目的地までの最適ルートを検索し、音声や触角などを使って障がいのある人を誘導します。ルートの途中に障害物などがある場合は、カメラとセンサーで認識し、避けるルートを伝えます。加えて、お店の案内や買い物を音声対話で支援します。また、カメラで知人を認識して、表情や行動などから相手の状況を判断し、円滑にコミュニケーションできるようにサポートします。映像及びセンサーの情報から周囲の行動を認識し、「行列に並ぶ」などのその場に応じた社会的な行動の支援も出来ます。

さらに、新型コロナウイルスに対応するために、映像及びセンサーの情報からソーシャルディスタンスの確保、映像からマスク着用の有無を判断し音声と振動で知らせユーザーに状況に応じた行動を支援、マスク着用時でも映像から知人を認識し円滑なコミュニケーションを支援する機能が加わっています。商品タグのRFIDをスマートホンで読み取らせ、手に取った商品情報を音声で伝え、買い物を支援する機能も用意されています。

今回、スーツケースにした理由は、「一人で移動する際にスーツケースを前に押しながら進むことで、障害物を避けるなど安全性を確保できる」と、プロジェクトの技術統括者でご自身が視覚障害者でもある浅川智恵子IBMフェローの体験から生まれています。

今後、慶應義塾大学と早稲田大学が賛助会員として参画し、AIスーツケースをプラットフォームとした研究活動も予定されています。実証試験には日本点字図書館と日本盲導犬協会が、視覚障害者の移動支援や技術的課題の解決に向けた知見の提供を予定しています。

近年、高齢化に伴う視力の低下や緑内障をはじめとする目の疾患発生などにより視覚障害者は増加してきています。日本眼科医学会の報告では、全国に視覚障害者は2007年で推定164万人いて、2030年までに200万人に達すると予測され、その増加は社会的課題となってきています。 

浅川氏によれば、現状ではまだまだ多くの課題があるとのこと。例えば、「視覚障害者にも速く歩く人もいればゆっくり歩く人もいる。ユーザーの歩く速度に合わせて安全に誘導することが難しい」。社会に実装化するには、屋内の地図情報やもの、人を認識するための大量のデータも必要になる。今後、2020年から2022年の3カ年の計画で技術開発や実証実験を行い、社会実装の構想を練っていく。現状では実装化の目標年はまだ決まっていない。ロボットの小型化や低電力化を進めながら、まずは10kg前後の重量を目指し軽量化を進めていく。今年6月には商業施設などでユーザビリティや利便性、課題を検証する実証実験を行う予定されています。

コレド室町での実証試験の様子  (出典:AI Suitcase Consortium)

 

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